孤高の文豪エドガー・アラン・ポーの怪奇と幻想渦巻く悪夢世界を、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの欧州三大巨匠が贅沢に映像化したオムニバス巨編。
耽美派ヴァディムが愛妻ジェーン・フォンダを主演に迎えた第1話「黒馬の哭く館」は、気まぐれで傲慢な伯爵夫人と、その誘惑を拒んで殺され黒馬に憑依した男の倒錯した愛の物語。自分と瓜二つの男に翻弄される主人公に美男アラン・ドロンが扮した第2話「影を殺した男」は、繊細な心理描写に長けたルイ・マルの筆致が冴える一編。映像の魔術師フェリーニの第3話「悪魔の首飾り」は、逢魔が時の古都ローマを訪れた落ち目の映画スターが、禍々しい少女の幻影に死の世界へと誘われる。
甘い退廃、極上の夢幻、狂気と破滅、そして底なしの暗闇で待ち受ける死――制御不能な人間の心の深淵をめぐり、三者それぞれの作家性が妖しい恐怖の結晶となってきらめく。怪奇幻想映画の真髄を堪能できる傑作である。
○1968年フランス=イタリア映画(製作:レス・フィルムズ=コシノール=PEA)
○1969年日本公開作品(配給:日本ヘラルド映画) |